いさぢちんメモ

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新潮文庫nex雑感

創刊100年、新潮の次世代ラインナップ「新潮文庫nex」は、新潮文庫だからできる「キャラクター」と「物語」を融合させた「面白い」エンタメ小説を目指す、らしいです。面白いエンタメ小説であり、とりわけキャラクターを重視した小説というと、そのまんまライトノベルなわけですが、新潮文庫nexライトノベルレーベルではなく、既存の新潮文庫という枠組みの中で展開していくそうです。こういった試みは特別目新しいものではなく、角川文庫は既存の一般文芸レーベルのなかで角川キャラクター文芸というライトノベル枠の作品を刊行していますし、角川ホラー文庫がほぼラノベ化している事も今に始まった事ではありません。他にもかつては「一般文芸の棚に置いて下さい」と要請していたと噂されるメディアワークス文庫、ライトと文芸の融合を目指した富士見L文庫などなど、書店視点では主にライトノベル棚に置かれている自称一般文芸、もしくは一般文芸棚に置かれているライトノベル的ポジションの作品群は近年増え続けており、我々の業界*1では「キャラノベ」「キャラ立ち小説」などと呼ばれています。

さて、そんなカテゴリに創刊100周年の看板を引っ提げて重役出勤してきた新潮文庫nexですが、いったいどれほどのものか。子供時代は新潮っ子と自称するくらいに新潮文庫ばかり読み*2、今はライトノベル読みである僕の視点でざっくり見てみました。

新レーベルではないそうですが、新潮の特徴であるスピンがなく、また化粧裁ちされているので、従来の新潮文庫とは明らかに別物な見た目。表紙にはふゆの春秋、越島はぐ等、他ラノベレーベルで見かける顔ぶれを起用したポップなデザインで、派手な表紙の多いライトノベルの中にあっても埋没しないだけの個性を放っていました*3。また創刊ラインナップには銀帯と、まるでラノベ新人賞受賞作であるかのような力の入れっぷり。老舗新潮の本気が窺えます。そう、新レーベルではない、ラノベレーベルではないと言いつつ、見た目においては明らかにライトノベルを意識していまして、一般寄りに日和った部分がない。真っ向からライトノベルレーベルに対抗しようという意思が感じられます。

創刊ラインナップは6作、うち4冊を購入し現在3冊読みました。好みもあるけど、どれを読んでも当たりだと言うほどではなくて、クオリティ、ジャンル的にも結構幅がある印象です。

まずは電撃文庫とらドラ!」「ゴールデンタイム」などでお馴染みの竹宮ゆゆこさんの新作。一般文芸寄りのレーベルで、まさかライトノベルの中でも相当はっちゃけた部類に入るゆゆぽが創刊ラインナップに入っているとは、かなり意外です。さすがにちょっとはいつものゆゆぽ節も抑え気味に大人しくなっているのでは……と思っていました杞憂でした。むしろゴールデンタイムを上回るゆゆぽっぷりで従来の残念ヒロイン描写も手を抜く気配がない。竹宮ゆゆこの書く女性は、心情描写が緻密で生きた人物という印象が強いので、女の子主人公のラノベを書いた方が絶対に面白いだろうからそんな作品を読みたいとつねづね思っていたのです。『知らない映画のサントラを聴く』はそんな夢を叶えてくれました。

ちなみに精神的百合作品です。

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)

サクラダリセット』『ベイビー、グッドモーニング』でおなじみ河野裕の青春ファンタジー。氏は『つれづれ、北野坂探偵舎』刊行の際に

と発言していましたが、実際読んでみるとそこはかとなく遠慮があるといいますか、尖った部分が丸くなって全力でラノベを書いていないような印象を受けました。しかし、今回の『いなくなれ、群青』は主人公が学生であるという部分だけでなく、ストーリー、舞台などなど河野ワールド全開といった雰囲気で、北野坂探偵舎で少々物足りない思いをしたサクラダリセットファンにもおすすめできる良作になっていると感じました。

個人的な好みでは、こういうお話は単巻完結にしてほしいので、シリーズ物であるところ、ラスト数ページの展開がちょっと好みから外れるのですけど、ライトノベルはある程度のシリーズ化はしかたないから、そのへんはまぁ。

坂東蛍子、日常に飽き飽き (新潮文庫nex)

坂東蛍子、日常に飽き飽き (新潮文庫nex)

これはちょっと難物。僕の好みではつまらないし、印象では雑なセカイ系で、不条理なギャグを繰り返すドタバタ物って感じで、群像劇風ではあるけど描写が足りなくて散漫。小説としてみたら今ひとつであるんですけど、ただ勢いだけはあって、アニメで言うとスペース☆ダンディみたいな事をしたいんじゃないかなーとなんとなく感じました。ただほんとに描写が雑で、そのへん好みもあるのかもしれないけど、僕は読んでいて辛い文章でした。

この作品の読後感はなんとなくMF文庫Jの『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』を読んだときの微妙な気持ちに似てました。作風が似てるっていうんじゃなく、読後感が。もしかしたら『マカロン大好き〜』みたいな作品が好きな人にはおすすめ出来るかもしれません。

さて。

そんな感じで3冊読んだ感想としては、内容としても一般文芸寄りに遠慮した部分がない濃いめなライトノベルで、主要ラノベレーベルとも競合しそうなレベルにある、と思いました。メディアワークス文庫や角川キャラクター文芸が相手ではなくて、ガチで電撃文庫ガガガ文庫あたりと勝負出来るクラスのラノベ力を秘めています。

新潮文庫nexライトノベル棚に置かれないことが多いようだけど、想定した読者へ届きにくく不利なのでは」という意見もあるようでしたが、そのあたりはあまり問題がないように思えます。実際とらのあなアニメイトでも扱っているそうですし、そもそも元々あわいの作品群「キャラノベ」が台頭してきているので、多くのラノベ読みはそのあたりの棚もチェックしているでしょう。むしろ重要なのは、「ライトノベルというカテゴリに偏見を持っていて読まない層」なのではないでしょうか。一般文芸棚に置かれ、新潮文庫の名に根付いた信頼をエサに、一般文芸しか読まない読者層にライトノベルを読ませラノベへの苦手意識を払拭させる、そんな役割が期待されます。

キャラノベでよくある「ライトノベルを卒業した読者のためのレーベル」「ライトノベルと一般文芸との橋渡し」みたいな意識でいると、結局ライトノベルというカテゴリを一段下に見てしまうことになり、それでは存在感のあるキャラクターも重厚な物語も良質なエンタメも出来ないまま中途半端にラノベっぽいだけのあっさりめの一般文芸になってしまいます。できれば新潮文庫nexにはそういった意識を持たず、創刊100年の看板に胡座をかかず、驕らず、ライトノベルに真摯に向き合って欲しいと、そう願います。少なくとも創刊ラインナップからはその心意気が感じられました。新潮文庫nexの益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

*1:どこだ

*2:おもに池波正太郎

*3:ちなみに新潮文庫nexは一般文芸棚で展開される事が多いそうですが、僕の行きつけの書店ではラノベ棚エンド台に積まれていました。

長年タイトルを思い出せなかった初エロゲが判明した話

なにしろずいぶん前のことでしたし、それほど印象深い作品ではなかったせいかクリア後すぐに売り払った記憶がありまして、なんとなくこんな内容だったっていうのは覚えていても、タイトルなどすっかり忘却の彼方でした。その後、「初めてのエロゲはなんだったか」みたいな話題になるたびに、このゲームのことをふと思い出すようになり、気になって何度かかつて運営していたサイトの日記などで触れていたのですが、当時は知る人が現れずずっと謎のままでした。

ところが。

このツイートがブクマされ、付いたコメントにそれらしきものが。

フェアリーテールのドラグーン・アーマーがそれっぽいかなぁ。

フェアリーテールのドラグーン・アーマーがそれっぽいかなぁ。 - a235のコメント / はてなブックマーク

検索したら大当たりでした。
ドラグーンアーマー

b:id:a235 さん、ありがとうございました。これで「初エロゲはタイトル覚えている中では『きゃんきゃんバニー スペリオール』」とか言わずに済みます。本当にありがとうございました。

しかしすごいです。この少ないヒントでよく分かりましたよね。ちなみにフェアリーテールかカクテルソフトのどちらかだとは思っていて、過去の作品リストをざっと見たりしていたのですが、正式なタイトルが「DORAGOON ARMAR for Adult」だったせいか目に入っていなかったみたいです。公式サイト*1にはスクリーンショットもありませんでしたし。

「エロ無し」なのに何故エロゲか、っていうのはえっちなシーンがないって意味で、お供の妖精さんにきわどいコスプレをさせる要素がアダルトだったらしいです。上で貼ったリンク先にも書いてありますが、ソフ倫の設立は沙織事件が起きた91年以降で、それ以前のアダルトゲームには明確な基準がなかったんですよね。だからソフトハウスがアダルトだと言えばアダルトだった、みたいな*2。プレイしてガッカリしましたけどね!

余談ですけど、沙織事件以降、ソフ倫設立以前の混迷期には、そんな感じのセックス描写が省かれたエロゲがいくつか出ていた覚えがあります。あれはあれでよい物でしたが。

さて、じつはこの話はこれだけでは終わらなかったのです。この後、twitterのフォロワーとのやり取りの中で、別の方の「タイトルが思い出せない児童文学」の話になりまして、それがどうやら無事解決に至ったみたいです。

感動的な展開でした。発端が初エロゲの話じゃなければもっと感動的でしたよね。なんかごめん……。

未解決案件

他にもタイトルが思い出せずに長年悶々としているものがあるので、せっかくなのでここにも提示しておきます。

ピンときたら教えて下さい。お願いします。

*1: http://fandc.co.jp/catalog/pc/405

*2:意味合い的には逆か。

お手水少女

お手水とは神社やお寺などを参拝する前に手と口を清める水の事で、参道脇などにある手水舎で行います。

一般的な作法は

  1. 右手で柄杓を取り、左手を洗う
  2. 左手に柄杓を持ち替えて、右手を洗う
  3. 再び右手に柄杓を持ち替えて、水を左手で受けて口をすすぐ

このほかに「口をすすぐ際は音を立てない」とか「水を吐き出すときに手で口元を隠す」だったり「最後に柄杓を立てて柄を洗う」なんて作法があったりしますが、細かいことは気にしないで、ようは手と口を清める気持ちが大切って事ですかね。

さて、そんなお手水の作法を参拝者に教えてくれる存在として、お手水少女と呼ばれる*1方たちがいらっしゃいます。

よく見かけるのはこちら左側のお嬢さん。育ちのよさそうな上品なお顔立ちに、可愛らしい水玉模様のお洋服。白いハイソックスにあしらわれたさくらんぼが趣深い。お隣の赤ワンピちゃんの素朴さもよいです。このお二人は結構いろいろな神社でお見かけしますね。むしろ全国神社お手水少女はこの二人の寡占状態といっても過言ではないかもしれません。

こちらは少女というかお姉さんです。ちゃんとした看板などではなく、印刷された紙をラミネートフィルムで挟んだだけという簡素さですが、いつもと違うお姉さんにお手水作法を教わるのもちょっとドキドキします。

神社といえば、やっぱり巫女さんよねー。こんな可愛い巫女さんに手取り足取りお手水作法を教わりたいです。

どうでしょう。慣れきってしまいつい適当にしてしまいがちな手水ですけど、かわいいお嬢さんが作法を教えてくれると、しっかりやろうって気持ちになりますよね。神社へ参拝する際に手水舎へ立ち寄り、どんな子が作法を教えてくれているか注意して見るのも楽しみの一つになるかもしれません。

*1:一般的な呼び名かは知らん。

大丈夫、早川のラノベだよ!〜ハヤカワ文庫JAを読まないラノベ読みにオススメするハヤカワラノベ5作〜

T.B!T.B!T.B!T.Bぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!T.BT.BT.Bぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!紡防躑躅子たんの鏡色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…くるくるくる〜!!
ゆーげんさん表紙のT.Bたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
シリーズ再始動決まって良かったねT.Bたん!あぁあああああ!かわいい!T.Bたん!かわいい!あっああぁああ!
ハヤカワ文庫増補改訂版も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ラノベなんて現実じゃない!!!!あ…表紙も挿絵もよく考えたら…
T . B ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!東京駅11番ホームぅうううう!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?竹岡美穂絵のT.Bちゃんが僕を見てる?
表紙絵のT.Bちゃんが僕を見てるぞ!T.Bちゃんが僕を見てるぞ!口絵のT.Bちゃんが僕を見てるぞ!!
ハヤカワ文庫のT.Bちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはT.Bちゃんがいる!!やったよ佳惠さん!!ひとりでできるもん!!!
あ、ハヤカワ文庫のT.Bちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアリスぅう!!あ、揚羽!!紙鑢コキぃいいいいいい!!!「「「ドツボッシュトルタぁあああ!?」」」
ううっうぅうう!!俺の想いよT.Bへ届け!!東京駅11番ホームのT.Bへ届け!

あ、はい。

そんなわけで『スワロウテイル』シリーズでお馴染みの籘真千歳さんの、電撃文庫から刊行されていたデビュー作『θ 11番ホームの妖精』の増補改訂版がハヤカワ文庫JAから発売されました。電撃文庫版収録の2編へパブーで期間限定公開されていた『欄とパンダと盲目の妖精』を追加した完全版。残念ながら挿絵はありませんでしたが、竹岡美穂さんのイラストが背表紙から裏表紙までデザインされた装丁は大変美しく、スワロウテイルの新表紙同様、書店でも非常に目を惹く存在となっておりました。

それはさておき。

最近ついったーなどで、結構年の離れたライトノベル読みの皆さんをフォローさせていただいているのですが、あまりハヤカワ文庫JAライトノベルだと認識していないご様子で、そもそも購入検討対象にすら入っていない、なんて事も聞きました。「ハヤカワってなんか地味だし……」「こんなおっきいの(カバーに)入らないよぉ……」「書店のどこにあるか分からないし……」みたいな。それはあまりにも勿体ない。地味なのは背表紙だけです。トールサイズだって活字にゆとりが出来て電撃文庫あたりよりずいぶん目に優しくなってます。書店は……お店によっては一般文芸棚の片隅だったりするけど……だいたいラノベとキャラノベのあわいにあるよ! 大丈夫怖くないよ! 読めば気に入るよ! てなわけで、『θ 11番ホームの妖精』の表紙に魅せられてハヤカワ童貞をT.Bに奪われちゃったラノベ読みがいたりするかもしれません。そんなあなたに最適な、ハヤカワ文庫JAからおすすめのライトノベルを5作ほど紹介しようと思います。

籘真千歳スワロウテイル 人工少女販売処』

この流れなら、やっぱり最初にスワロウテイルをすすめなきゃいけない気がします。タイトルもちょっぴり意味深でドキドキします。「お、表紙の子が可愛いな」と思ったらもう買いです。イラストに騙されるなんて事はありません。揚羽ちゃんは実際に可愛いです。

おそらくは性行為により感染が拡大、症状が悪化するとされる「種のアポトーシス」なる病が蔓延する未来、かつて東京があった場所が沈降して出来た関東湾に浮かぶメガフロート「東京自治区」を二分し、感染者は男女別に隔離され、また人間たちの伴侶として、第三の性である人工妖精という名のヒューマノイドたちもまたそこに暮らしている。

そんな世界や、SF的ガジェットの設定、などなど魅力満載の1冊です。

小川一水『時砂の王』

小川一水さんの作品はどれもハズレ無しで面白いので、どれを推そうかなと、悩みました。やはり今なら「天冥の標」シリーズが熱いですが、今までのアイデアを全部ぶち込んだかのような圧倒的物量感ですし、それを最初に読んじゃったら他の面白い短編集なんかがちょっと色褪せちゃうかも……という気もするのです。なら、今のところ天冥で出てきていない時間要素がメインの作品で行ってみましょうか、と。

時砂の王

時砂の王

謎の異星人の侵略によって地球が滅亡の危機にさらされている26世紀。たとえ己の世界が滅亡しようとも、過去へ遡り、その時点の地球を救うことで別の時間枝だけでも救い、その時間枝の未来を守りたい。敗走するたびにその時間枝を諦め過去へと遡る、そんな悲壮な超時空撤退戦。そして最終防衛戦である古代邪馬台国へと辿りついた主人公は一人の少女と出会う。
萌えあり、バトルあり、タイムパラドックスありの時間SF決定版。

小林泰三天獄と地国』

ラノベ読み的には『紫色のクオリア』の元ネタとしてよく紹介される『玩具修理者』(角川ホラー文庫)の『酔歩する男』が有名かもしれません。小林泰三さんの作品はファンタジー的でありSFっぽくもあり、不思議でグロテスクで後味の良くない作風が魅力だと思ってます。基本はホラー作家であり、ホラーを科学の目でみたとき、どういうものが出来上がるのか、そんなSF短編の数々も魅力ですが、今回は長編を1冊ピックアップ。

天獄と地国

天獄と地国

もともとは『海を見る人』という短編集に収録されていたお話で、その時点では設定を開陳しただけでストーリーらしいストーリーが始まらないハードSFっぽい作品だったのですが、長編として完成された『天獄と地国』は、奇抜な世界の設定を元に、異形の超巨大生物兵器のバトルあり、肛門からの異物挿入あり、美少女ありと素晴らしいエンタメ作品となっておりました。

頭上に地面、足下には宇宙空間が広がる、天と地が逆さまの世界。世界の秘密に気付いたときは鳥肌が立ちました。

あとザビたんかわゆす。

瀬尾つかさ『約束の方舟』

瀬尾つかささんというと、最近では富士見Fの『スカイ・ワールド』で流行のMMO物をゲームシステム面での濃厚な描写をメインにして他との差別化を図るなど、緻密に設定を作り込む作家というイメージが定着しています。他にもデビュー作『琥珀の心臓』では異世界の宇宙的恐怖を書き、『クジラのソラ』では異星人によって宇宙艦隊シミュレーションゲームを課せられた地球人たちを書くなど、SF的な作品も多く見られました。そんな瀬尾つかささんのハヤカワでの作品はこちら。

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

舞台は世代型恒星間宇宙船。ゼリー状の宇宙生物に襲われ人口を激減させた過去があるが、宇宙生物との意思疎通が可能になり、彼らを友とし共生することに成功。少年少女たちはゼリー状の生物である彼らベガーの中に入ることで真空中でも活動出来る能力を利用して宇宙船の社会の中で重要な役割を担っている。しかし、かつて襲われたという経緯や、ベガー食欲が理性を上回ると中に入った子供たちを消化してしまうという彼らの特性もあり、大人たちの間ではベガーに対する悪感情が消えず、ベガーに全幅の信頼を寄せている子供たちとの世代間衝突の気配がある。子供らしい大人への反発もあって、事態はとんでもない方向へ推移していくのですけど、詳しくは読んでのお楽しみ。

野粼まど『ファンタジスタドール イヴ』

ファンタジスタドール イヴ

ファンタジスタドール イヴ

「それは、乳房であった」

ラノベファンに質問があるらしい

不真面目に答えるよ。

ラノベファンに質問がある

この増田とぼくとでは生きてきた時代が違いすぎるようだし、ライトノベルが何かという認識すら違いそうなので、あまり参考にならないかもしれない。ぼくは、80年代に両親の本棚にあった赤川次郎藤川桂介氷室冴子などを読み、そこから現代で言うところのライトノベルというカテゴリの小説群を好むようになった。その後、自分から銀河英雄伝説や青帯の角川文庫を買いあさるようになる頃にはどっぷり浸かっていて、そのうちドラゴンマガジンが創刊し風の大陸スレイヤーズに衝撃を受け、そのままずるずると富士見ファンタジア文庫角川スニーカー文庫の本を読んでいた、そんな世代。
いつ頃ラノベから離れたか記憶にないけど、気付いたら興味の対象が時代小説やミステリに移っていたな。それらも今から思い出すとライトノベル的であるかどうかで読む作品を選んでいたと思えるので、大して嗜好は変わってないのかもしれない。あー、いや、両親の本棚を漁って読んだ吉川英治吉行淳之介なんかはラノベっぽくはなかったけど。
そのあとで自覚的にライトノベルへ戻ってきたのは「マリア様がみてる」が切っ掛けだったのだけど、そのライトノベルから離れていた90年代後半から00年代初期あたりの知識がほぼ皆無なのは今でもコンプレックスになっていたりいなかったり。

さて。

ラノベしか読まない?他の小説は読む?それは何故?どこに魅力を感じている?

ラノベって何だろうな。それはレーベルによって決定付けられるのか、イラストの有無か、作家性か、いろいろ基準があるけれど、僕の考えている一番ざっくりとした区分で言うと「先鋭化したジャンル小説群」だ。魅力を感じるのは、その常に時代の先端を行く尖りきった感性と若者文化を貪欲に吸収する姿勢。
ラノベ以外の小説を読むかどうか、それは観測者によって答えが異なる。自分ではラノベを読んでいるつもりでも、あなたがそれをラノベと認識するかは分からないからだ。

ラノベファンはラノベを一般娯楽小説(定義付けのために一般と称しているだけ)と同じだと思っている?

娯楽小説である以上は、ライトノベルとして認められる要素は備えていると思う。しかし、そもそも一般ってなんだろうな。古臭い価値基準で書かれた年寄りしか読まないような小説だったら、それとラノベはやはり根本から違うと感じるんだろうか。原義で言えばライトノベルとはその作品に対する言及の軽さや手に取る際のハードルの低さであったように思うので、一見して重苦しく人を寄せ付けないようなモノも、やはりライトノベルとは言いがたいかもしれない。

ラノベで、パロディ要素が殆どを占めるようなものはどう思っている?

時事ネタはすぐ風化するぞ。*1

後々になって読み返したとき、その風化度合いを含めて楽しめるのではないだろうか。作品の書かれたその時代の生の空気が文章の中に息づいているのだ。

ラノベは何故ジャンル分けされない?ライトノベルという呼称は既に不要ではないか?

ラノベ」はジャンル名称ではない。ある特定の傾向を持つ小説群をカテゴライズするために便宜上付けられたものであると思えばいい。自分が「ライトノベルが好きだ」と理解していれば、書店へ行ってライトノベルが並んでいる棚から買っていくだけで、だいたい好みの作品にぶち当たる。そう大ハズレはしないはずだ。ネットでラノベの杜をみて読む作品を決める、とかでも可。なので不要ではないと思う。ライトノベルという呼称が嫌なら「ヤングアダルト」でも「青少年(少女)向け小説」でも好きなように呼べばいい。角川だと最近は「キャラクター文芸」などとも呼んでいるのでそれでもいい。ジャンルに寄らず、好みの作風をまとめて語る上で便利な言葉として利用しているのだ。

*1:ピクニックだ!

2013年ライトノベル表紙ベスト

twitterにポストしておいて後でブログに書こうと思っていたのに色々あって2週間ほど放置してしまい完全に旬を逃した、そんなエントリ。

2013年のライトノベル表紙ベスト5 - ディドルディドル、猫とバイオリン
表紙がよかったラノベ大賞 - 小説☆ワンダーランド
このあたりのエントリに触発されました。

王子降臨 2 王子再臨

ひぃ! 美しい!!

王子降臨 2 王子再臨 (ガガガ文庫)

王子降臨 2 王子再臨 (ガガガ文庫)

1巻の王子も美しすぎて目が眩みますが、王子再臨はさらに悪堕ちな王子の妖しい美力が表紙から溢れてきてもうたまりません。

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

アレクシア女史より引き続き、邦題と表紙にライトノベルへの意識が色濃く反映されているソフロニア嬢。

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

完全に表紙買いでした。内容もちゃんとライトノベルとして認められるレベルでしたので表紙詐欺ではないですけど。

スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの

じつは1巻の人工少女販売処ってはじめ表紙買いだったのですよ。そう考えるとラノベの表紙って重要なのだと思いますね。

わきわき。

珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る

流行の一ジャンル、不思議店主と日常の謎作品においてビブリアと共に双璧と目されるタレーラン

1巻でクールで聡明な印象をもった美星バリスタの、どこか幼く可愛らしい一面が垣間見える2巻ですが、表紙もどことなく1巻よりも幼く見える気がします。

お釈迦様もみてる オン ユア マークス

男子校のバレンタイン……チョコバナナしか思いつかない……。

それはそうと、この表紙を見たときからテツがコロンビアにしか見えなくて、妙に印象に残ってしまいました。2013年のライトノベルで忘れられない表紙の一つです。

2013年に読んだライトノベル

2013年は節制したかいあって233冊で済みました。
isajiさんが2013年に読んだ作品 - ブクログ

レーベル別の冊数はこんな感じ。

レーベル 旧作 新刊 備考
ハヤカワ文庫 22 18 40
MF文庫J 8 22 30
ガガガ文庫 1 26 27
角川文庫 13 12 25 うち靴2ホ7
GA文庫 1 19 20
電撃文庫 3 13 16
講談社 10 4 14 うち講ラ2
MW文庫 4 9 13
ファミ通文庫 5 8 13
集英社 1 7 8 うちコバルト4
富士見F文庫 3 3 6
朝日ノベルズ 0 5 5
創元SF文庫 4 0 4
HJ文庫 1 2 3
OVL文庫 0 3 3
幻冬舎 1 0 1
TO 0 1 1
タソガレ文庫 0 1 1
スマッシュ文庫 0 1 1
宝島社 0 1 1
創芸社 0 1 1
77 156 233

ここしばらく電撃文庫はだんだんと読みたい物が無くなってきまして、あまり新作に手を出さなくなってきたばかりか俺妹、ロウきゅーぶ!、C^3等のシリーズが相次いで完結したせいで数が少なくなりました。去年多かったGA文庫も大幅に数が減り半分以下という結果に。読書数自体を減らしたこともありますが、この2レーベルは僕の中でかなり弱体化した感があります。なんとなく印象で今のラノベレーベル御三家はガガガMFハヤカワかなーと思ってましたが、読了数がそのまま印象に結びついていた模様。あ、ハヤカワが多かったのは天冥の標やアレクシア女史の既巻をまとめて読んだせいかもしれません。MF文庫JKindleで1巻無料の作品を読んだこともあり、またここしばらくの萌え特化レーベルというカラーから脱却していろいろ模索中であるように見受けられることも原因な気がします。ガガガは安定して尖ったラノベ出してきますし納得の結果。

以下、2013年に読んだラノベのうちでオススメの10冊。感想は書くのが面倒になりました。

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

コロロギ岳から木星トロヤへ (ハヤカワ文庫JA)

王子降臨 (ガガガ文庫)

王子降臨 (ガガガ文庫)

王子降臨 (ガガガ文庫)

氷の国のアマリリス (電撃文庫)

氷の国のアマリリス (電撃文庫)

氷の国のアマリリス (電撃文庫)

どうせ私は狐の子 (TOブックス)

どうせ私は狐の子

どうせ私は狐の子